【世界は女性とデジタルが救う】1. 日本ってどんな国?(IT投資と給与)

はじめまして

私は、紹介文にもありますが、約20年間ユーザー企業のIT部門に勤務した後、偶然が重なって、ITコンサルティング業界の経営に携わった比較的珍しい人間です。
また、管理やセールスだけでなく、「インフラ」「アプリ系」「プロジェクト管理」など、現場でも長い時間を過ごして来ました。

結果、皆さんから「ユーザー企業とIT企業の双方の経験、経営と現場の視点を持っている」とお褒めの言葉をいただくこともありました。

自分が意図して得たものではなかったとは言え、人とは異なる「何か」を持ち得たことが、これまでの大きな支えになってきたことは間違いのないところだと思います。そういった経験を踏まえ、不定期になるかと思いますが「IT徒然草」のようなものを書いてみたいと思います。

お付き合いをいただければ幸いです。

第一回は、「世界は女性とデジタルが救う。 1.日本ってどんな国(IT投資と給与)」と題し、やや大仰ですが「日本の“今”とこれから大切なこと」について書いてみます。

皆さんは、日本企業のIT投資って、世界と比べてどんな感じかご存知ですか?

実は、日本企業のIT投資は、欧米の半分以下。

JUAS(日本ユーザー協会)のIT動向調査報告書2023によると、日本企業のIT投資は売上げ比で約2%(売上げ1,000億円の企業だと20億円)。

一方で欧米は、図1の通り、投資率の最も低い5,001-10,000人規模の企業でも約5.3%です。

ずいぶん前に、ある経営者向け講演会でこのお話をしたところ、多くの方々から「だってITは“必要経費”だからできるだけ使わない方がいいもん」というコメントをいただきました。

欧米の経営者の方々からは「そりゃ安いに越したことないけど、大事なのはリターンだよ、だってITは“投資”だもん」という答えが返ってきます。

“経費”なら意思決定はリターンなど求めず、「出来るだけ安くあげたい」というベクトルにしかなりません。
“投資”なら「リターンが十分で投資余力さえあればどんどん使うべき」というベクトルになります。

この「ITは“経費”か“投資”か」という考え方の違いは、IT投資の差として現れていると言えるのかもしれません。

最近言い尽くされたことですが、日本は「欧米より“とんでもなく”給与が低い国」です。
図2-1はOECDの報告を加工した平均年収の2021年時点での比較です。
日本はG7で最下位、トップのアメリカとは約1.8倍以上も差があります(アメリカが年約75,000ドル、日本は約40,000ドル)。
円安になる前の数字ですから、今やその差はもっともっと大きくなっているはずです。

30年前は、ここまで悲劇的な状況ではありませんでした。
それどころか、1990代は、アメリカやドイツには負けるものの、イギリスやフランスよりも上だった(今や韓国にも抜かれています)。
その後、他国がガンガン給与を上げたのに、微動だにしなかった日本が置いて行かれた形になってしまいました。

この悲劇的な状況、「どうして日本の給与は低いの?」という質問に対する一番単純な答えは、「だって利益率が低いから」です。

図3-1は通産白書2017から 抜粋した2015年の日本と欧米の収益構造の比較です。
少し古い数字ですが、今でもそんなには変わっていません。

ここから計算すると、米国企業の利益率は日本企業の約1.8倍(4.2%対7.5%)です。


日本企業は利益率が低く人件費を上げる余力がない、このことが給与が低いひとつの要因なのかもしれません。
前述の講演会でこのお話をしたところ、「そりゃ、日本は人件費が高いんだもの、利益率が低いのはしかたがないよ」という「言い訳」をいただきました。

既に述べたとおり、30年以上前の残像を引きずった「幻影」です。

もう少しこの図を見てみると「売上原価率が高いから利益率が低い」、その「売上原価率が高いのは生産性が課題」とされています。

売上原価に占める大きなコストの一つは人件費です(ガソリン代等もありますが、輸配送や完成品の製造、サプライヤーから調達される部品の製造にも人手は欠かせません)。

生産性が低い、つまり「投下したコストに比べ成果が少ない」ことに「一人あたりのコストが安い日本」を勘案すると、「欧米との一人あたりの生産性の差」は、更に広がります。

アメリカの人件費は日本の約1.8倍以上で利益も約1.8倍。

金額に直すと、アメリカが1人=年収75,000ドルを投下して7.5%の利益を作り出すのに対し、同じ金額を日本で投下するためには1.8人必要で、それでも4.2%の利益しか創出できない。

超極論で単純計算ですが、「利益率の差」が一人あたりの生産性の違いからのみによるものだとすると、単純計算すると、利益を創出する生産性の実力差は約3.2倍(1.8倍の1.8倍)です。
アメリカ人が1人で行っている仕事を日本人は3.2人でしているということになります。

この、「壊滅的な差」の要因の一つに前述の「ITに対する考え方」があり、結果としてITへの投資の差となっていることは、これまで申し上げてきたことからもご理解いただけるのではと思います。

日本は人口が減っている代表国の一つです。
出生率はどんどん下がっていて、未来の人口はもっと減っていきます。

その日本が今と同等以上の経済を維持するためには;

日本人じゃない誰かに助けてもらう
働いていない誰かに助けてもらう
人間以外の何かに助けてもらう

ぐらいしかないのかもしれません。

上記3つのうち「一人当たりの生産性を上げる」ことに最も直接的に貢献するのは「人間以外の何かに助けてもらう」ことであり、ここで言う「人間以外の何か」は犬でも猿でもなく、言うまでもなく“IT(デジタル)”です。

ましてや日本の生産性はアメリカに3.2倍も差を開けられています。

高い給与が豊かな未来につながるとすると、そのためには、デジタルに欧米以上に投資する、デジタルはより高い生産性を生み出し、高い生産性は高い利益を生み、高い利益による余力は給与を上げる、その実績が継続したデジタルへの投資を後押しする、そういったポジティブな循環を創っていくことこそが、未来の日本にとって何より大切なことだと思います。

日本の「これから」は、ITに携わる皆さんの手にかかっていると言っても過言ではないと思います。

次回は「【世界は女性とデジタルが救う】女性こそが救世主!」をお送りします。

お楽しみに!